2012/07/02

これは私の ; My First Tin Painting;DVD の作品です。
これは Jansen Art Studio の学習プログラム制作の一環として、
世界中の Heritage デザイナーが一斉に制作したものです。
私は Tin Painting を担当しました。

アメリカと日本で販売しています。
価格は一律25ドルと設定されましたので、¥2625 です。
2作品が収録されています。


AmericanTin Painting Bascket

アメリカのティンペインティングのルーツはイギリスにあります。
少し長い文章になりますが、読んでみて下さい。



;シノワズリー・中国趣味(シノワーとは支那の意);が流行した要因は、
珍奇な文物、異国趣味、優れた品質である中国磁器への興味からでした。

 中国では、10世紀から磁器の生産が始まり、
1600
年代にオランダ東インド会社が、東洋貿易の足掛かりをつくり、
景徳鎮(けいとくちん)窯から染付の中国磁器を、
ヨーロッパへ運び出しました。

ヨーロッパの富裕な階級は、異国情緒あふれる形やデザインに引き寄せられ、
競うように東洋からもたらされた磁器を蒐集しました。
時はルイ14世から15世の絶対王制の頃、後にロココと呼ばれる時代でした。

ベルサイユ宮殿はロココの時代の逸楽と豪奢を背景に、
贅の限りを尽くした装飾が施されていますが、
その中には漆を施した調度品の部屋があり、
また、ベルリンのシャルロッテンブルグ宮殿の「磁器の間」と同様に、
王侯貴族の磁器への熱狂ぶりを伝えています。


 「ロク」とはフランス語で小石や岩のことで、
「ロク」を集めて貝や洞窟のようにあしらったという意味で「ロカーユ」と呼ばれ、
この「ロカーユ」の装飾を多用した時代様式が、
後に「ロココ」と呼ばれるようになりました。

この時代の貝殻の縁取りは「左右非対称」であり、
変化流動し、くねくね動き、CSの曲線を持ち、
ゆらゆら揺れる葉のような捉えどころのないフォルムを特徴にしています。
この装飾が、室内、庭園、絵画、版画のモチーフとして、
おびただしく表現されたのです。


日本では、14世紀頃までは、中国の龍泉窯から青磁を、
16世紀になると景徳鎮窯を中心に染め付け磁器を輸入していました。
中国磁器の需要が多かったので、有田では中国製品のコピーを製造し、
市場の隙間を埋めるような存在でした。
しかし、中国が内戦に入り、
輸出に応じ切れなくなった情報をいち早く鍋島藩が察知し、
伊万里、有田の窯業の整理、統合をはかり窯業を確立します。

1650年〜60年代には、中国製品に勝るとも劣らないほどの技術革新が進み、
1659年からは、オランダ東インド会社との貿易が成立するに至りました。
フランスでは、ルイ1415世の時代です。
この頃のアン女王の時代(1720年代)の後の、
ジョージ1世から3世までのジョージア時代に入ると、
家具ではマホガニーという時代ですが、
トーマス・ティッペンデールという家具職人が登場します。
彼は、マホガニーを素材として、
クイーン・アン風、ゴシック風、ルイ15世風、
中国風の多彩な家具のデザインをしました。

また、シェラトンという家具デザイナーも活躍したので、
この時代をティッペンデール・シェラトンスタイルと称しました。
この頃、中国の内戦により漆の輸入が困難になったヨーロッパでは、
日本から漆を輸入していました。
漆の製品のことをジャパンダとよんでいました。

イギリスのウエールズ地方の Ponty Pool (ポンティープール)という町で、
漆に憧れた貴族の命を受けた職人が、漆によく似た製品を作ることに成功しました。

漆の家具に描かれていたデザインを、
この新しく発明したトレーに描くようになりました。
それは、中国や日本の漆で作られた家具、器物からヒントを得ていました。
シノワズリーの影響を強く受けたものです。
ティッペンデール・スタイルの起こりです。

チッペンデールペインティングの特色は、日本や中国の影響を受け、
バックグラウンドは Black が多く、Gold で描かれ、金箔、螺鈿も含まれ、
豪華に装飾されていました。
ストロークは左右対称ではなく、流れるようなロココの曲線です。
トレーのデザインは時代と共に変遷を遂げます。

フランスでは、ルイ15世の時代に、
ボーンチャイナと呼ばれる磁器を作ることが発明され、
磁器の生産ができるセーブル窯ができ、ドイツではマイセンなどの窯が出来ました。

ヨーロッパではお互いにさまざまな文化が交流し、

イギリスのティッペンデールスタイルは、フランスのフローラルのスタイルに、
また、ロシアではロシアン・ペインティングに変化していきました。
このすべてのルーツはイギリスのポンティープールです。

     これが Tole & Decorative Painting のルーツです。

このようなブリキのトレーに描いた作品を;Tole;と称しました。
   

American Tin Painting Tray


アメリカではヨーロッパから
上陸したTin のペインティングが、
また一段と個性的に変化を
遂げていきます。

これは近い内にBlogで
ご紹介しましょう!

私の制作したこの DVD の中には
このような歴史を
詳しく解説しております。



DVD の表紙です。






先日、ある団体から講演を依頼されたペインターの方から電話を頂きました。
その方の疑問ですが、Tole &  ;Decorative Painting; とは?
一体どの時代から始まったのですか?
また、この言葉は何処から来たのですか?

そのような質問でした。

大雑把に分類すると、我々の描いている絵も、古代から伝わってきた絵も、
すべては同じルーツです。
すべての絵は、; Decorative Painting ; と呼ばれてきました。

Fine Art →ファイン・アートとは
オックスフォードやケンブリッジで教えていた
ジョン・アスキンが創り出した造語です。

「芸術」「美術」「工芸、工芸品」などなどの言葉がたくさんありますが、
概念が普遍ではありません。
それぞれが勝手に言葉を解釈しているようです。

アスキンがこの言葉を使うまでは、
すべての絵は;Decorative Painting ;  と呼ばれていました。



Tole & ; Decorative Painting ; の語源ですが、
これは フランス語のブリキ板 ; Tin : ティンからきています。

これはイングランドから歴史が始まっています。
これについては、今週中に、ページを割いて記述したいと計画しています。

アスキンがこの言葉を使い始めた頃は、
ロココ、ネオ・クラッシックの時期を過ぎ、レージェンシーの時代です。




絵画の歴史ですが、細分化したものもありますが、ここで、大雑把に分類してみました。
絵は紀元前から存在しています。ここでは細分化をできるだけ簡潔にしています。


Gothic ゴシック (およそ1550〜1620)

Renassance ルネッサンス(およそ1600〜1700)

Baroque バロック (およそ1620〜1700)
Rococo ロココ(およそ1695〜1760)

Neo- Classical ネオ・クラッシック(およそ1755〜1805)

Empire エンパイヤー(およそ1799〜1815)

Regency レージェンシー(およそ1812から1830)

Art Nouveau アール・ヌーボー(およそ1900〜1920)


我々がよく使うアカンタスのストロークも、
時代によりその様式が変遷しています。
どの時代をデザインするかで変化します。
時代を知ることも重要な勉強です。